先日、税理士会の研修を受講した際に、なるほどと思った内容がいくつかありましたので、その中から 固定資産 に関する留意点を2つご紹介します。

中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除

この制度は、青色申告を行う 中小企業者 などが、一定の期間内その製作の後事業の用に供されたことのない減価償却資産を取得し、一定の事業の用に供した場合において、その事業の用に供した事業年度に特別償却または税額控除を認めるという特例です。

今回の研修では、この制度の適用を受けた会社に税務調査が入り、ある理由で税務署から特別償却を否認されたため、 国税不服審判所 で争われることとなった事案でした。
というのも、この固定資産はいわゆる展示品で、その展示場において来場者へ実演使用されていたという事実があったのです。

ここでのポイントは、法律(租税特別措置法)の表現である「その製作の後事業の用に供されたことのない」の解釈なのですが、大雑把に言えば、納税者はこれを「展示と実演≠事業の用に供した」と解釈し、税務署は「事業の用に供した=新品」と解釈したことです。

確かに「新品」かどうかで言えば「展示品」は新品ではありませんし、新品より値引きして販売される(=価値が低い)のが一般的です。しかし、法律には新品と書かれているわけではありませんし、「事業の用に供した」の意味が法律に定義されているわけでもありません。

国税不服審判所は、「この機械装置は展示品として事業の用に供されていたというべきである」として税務署の主張を採用した裁決を下しました。

講師の先生は、『このような制度の適用を受ける際には、購入した固定資産が未使用か否かも確認しないといけません』と警鐘を鳴らしていました。

事業の用に供した日の判定

上記の特別償却又は税額控除以外にも、税法には様々な特別償却又は税額控除の特例が設けられていますが、これらの特例は基本的に「その事業の用に供した事業年度」に適用を受けられることになっています。

次のケースは、3月決算の法人で、いわゆる売電用の発電システムを購入し、設置工事も試運転も3月中に終えていたため、これを事業の用に供したと判断して特別償却の適用を受けたという事案でした。

3月中に設置して、試運転も終えて、発電も行っていたわけですし、何が問題なんだ?と思いましたが、なんとこのシステムが電力売却先の事業者の電力系統に接続されたのが4月以降だったというのです。

つまり、このシステムは3月中に稼働して発電を行っていましたが、実際にその電力は一切使用されず、売電が行われたのは4月以降になってからだったのです。

さて、固定資産が事業の用に供されたかどうかは、過去の裁決で次のように述べられています。

業種・業態・その資産の構成及び使用の状況を総合的に勘案して判断することになります。
「事業の用に供した日」とは、一般的にはその減価償却資産のもつ属性に従って本来の目的のために使用を開始するに至った日をいいますので、例えば、機械等を購入した場合は、機械を工場内に搬入しただけでは事業の用に供したとはいえず、その機械を据え付け、試運転を完了し、製品等の生産を開始した日が事業の用に供した日となります。
なお、事業の用に供した日とは、資産を物理的に使用し始めた日のみをいうのではなく、例えば、賃貸マンションの場合には、建物が完成し、現実の入居がなかった場合でも、入居募集を始めていれば、事業の用に供したものと考えられます。

こちらも結論から言えば、納税者の意見は採用されませんでした。売電用の発電システムは発電できるだけではダメだったのですね。

で、ここからが本題です。今回はいわゆる「期ズレ」が論点になっています。「今期が事業の用に供した事業年度ではないなら、翌期に特別償却の適用を受ければいいでしょ?」
はい。その通りです。翌期に調査が行われたなら。

税務調査はおおむね3年を1単位として行われますので、調査対象事業年度の最後の事業年度にこの特別償却を行っていれば、今回否認されても次の申告で特別償却を受け直すことができます。
しかし、2年前、3年前の事業年度の特別償却が期ズレで否認された場合、本来の事業供用事業年度はすでに申告済みなので、もはや適用を受ける余地は残されていないのです。

悪質な脱税に厳しいのは理解できますが、このような場合には、せめて正しい事業年度では特例の適用を受けられるような救済措置が設けられてほしいものです。