保険の機能とは

大きく分けて保険には「生命保険」と「損害保険」があります。この保険という商品には2つの機能があり、その1つが「保障機能」(損保については「補償機能」が正しいのですが、表記が長くなりますので便宜的に「保障」で統一します)です。
保障機能とは 保険事故 が生じたときに保険金や給付金が支払われることで、損害等に起因する経済的な負担のクッションとしての役割があります。保険と聞いたときにまっさきに思いつくのがこの保障機能でしょうし、この機能は他の金融商品には無い機能でもあります(共済は事実上保険と同じと考えてください)。

そして2つめの機能が「貯蓄機能」です。例えば、個人年金保険などは万が一の場合の死亡保障を準備するというよりも、老後の生活資金の準備で利用される方が大部分でしょう。
この貯蓄機能は保険商品に特有の機能ではないので、預貯金や投資信託など他の金融商品で同様の効果が得られます。

また、教科書的には保険の機能として紹介されませんが、保険の隠れたる機能として節税機能、または利益繰延機能があります。実は保険は他の金融商品に較べて、税に対して優遇されているところがありますので、この機能を目的として保険を利用するケースもよく見かけます。

保険で得しよう!

今回は、保障機能を目的に保険に加入する場合の考え方について書いてみます。保険という商品は、保険事故が生じたときに 保険金 が、保険金受取人に支払われます。一家の大黒柱である父親に万が一のことがあったと仮定して、遺された遺族の生活を考えてみると保険の大切さが分かります。まさに安心を買うとはこのことでしょう。

ところで、皆様は保険に入るとき何を考えて商品を選んでいますか?
ここで1つの例題を使って考えてみましょう。商品は「医療保険」です。話を簡単にするために「入院したときに1日1万円の 給付金 が支払われる」というシンプルな内容の契約としましょう。
さて、ここに2つの医療保険があります。どちらも1回の入院では60日までしか給付金はもらえません。皆様だったらどちらを選びますか?

  • A保険会社のX医療保険:入院したら5日目から給付金がもらえます。保険料は1月5,000円です。
  • B保険会社のY医療保険:入院したら初日から給付金が支払われます。保険料は1月5,700円です。

とてもズルイようですが、どちらを選んでも間違いではありませんが、損したくない人はX医療保険を、得した気分になりたい人はY医療保険を選ぶと良いのではないでしょうか。

少し話がそれますが、安心もタダではありません。安心の代金として保険に入ると 保険料 を負担することになります。仮に、1万人の30歳の男性は1年間に必ず1人死亡するとしましょう。このとき死亡した人の遺族に1,000万円を支払う保険商品を販売しようと考えたなら、1人から集める保険料は1年でいくら必要でしょうか?

1,000円?ブブー、外れです。確かに保険金を支払うだけなら計算上は1,000円で足りますが、その他に保険会社の社員の給料やら、広告費やら、保険代理店への営業手数料やら色々な経費がかかるので、実際には1,300円~1,400円くらいの保険料が必要になります。この保険金や給付金にならない300~400円部分を付加保険料といい、ライフネット生命はこの内訳を公開していますので、ご興味のある方はご覧ください。

このように付加保険料が存在するため、確率上は保険で得するということは理論的に無理なのです。では、保険は不要かと言うと絶対に必要です。不測の事態が生じた場合に、貯蓄で対応可能なら貯蓄の方が余計なコストがかからないため効率が良いのですが、すべての30歳の男性が1年で1,000万円の貯蓄はできません。このように個人の貯蓄で対応できないリスクに備えるために使うのが保険の本来の使い方なのです。

保険の正しい使い方

さて、ここまでを踏まえて、先ほどの医療保険を考えてみましょう。両者の差は入院初日から4日目までで給付金にすると4万円です。これは貯蓄で対応できない金額でしょうか?違いますね。この程度の貯蓄ができないなら、保険に入るより先にやることがあるはずです。

実際に昔の医療保険は、入院5日目からとか、8日以上入院したら1日目から給付金を支払うというものがほとんどだったのですが、医療の進化により短期入院が増えたので、現在では5日以内の短期入院が全体の3分の1以上となっているそうです。そこに「せっかく保険に入るのなら短期入院で給付金をもらえないのは損ですよ」というアピールも相まって、短期入院も保障対象とする医療保険が爆発的に売れたのです。

でも、もしも、本当にケガで3日間入院してしまったときのことを想像してみましょう。ただでさえケガは痛くて辛いのに、医療費で2万円も取られてダブルパンチです。やっぱり凹みますね。そこで給付金3万円をもらえたらどうでしょうか?

ややっ、ケガして凹んだけど、財布は逆にふくらんだぞ!となるかもしれません。

こういう感性の人が、この記事を読んでY医療保険を解約してX医療保険に変えてみなさい。入院しなければ結果オーライですが、入院したら踏んだり蹴ったりの上に給付金ももらえず、損した気分はMAXになること請け合いです。

ということですので、理論派の方はXタイプの保険を、感覚派の方はYタイプの保険を選ぶと良いのではないでしょうか、というお話です。