儲かるチャンスの見分け方
株式市場は野球の例ほどチャンスの状態が明らかではありません。また、チャンスのような絶好球に見えても、そこから変化してくる球が来ることもあります。これでは逆に打てません。
そこでチャンスを見分けるために、チャンス判定機を自分の中に作っておく必要があります。このチャンス判定機作成法の解説がこの連載の目的でもあります。
しかしながら、この判定機は100%チャンスを予想してくれるものではありません。チャンスのときにも「見逃せサイン」を出してきます。それは判定機の設定が厳しいからなのですが、多くの個人投資家はここで挫折してしまいます。
「う~、また値上がり株に見逃せサインが出ていた。こんな判定機なんて役に立たねぇ」となってしまうのです。また「チャンスサインが出ているのに、買っても全然上がらねぇ」というのも結構あります。さらに「やっと上がり始めたと思ったら、他の銘柄もいっせいに上がってる…」。
これもよくあるパターンです。
このように書くと、怪しげな健康器具よりもっと怪しげなチャンス判定機のように思えますが、この判定機の機能は「負ける確率を下げること」なのです。もちろん粉飾決算(インチキの決算)など、投入するデータが間違っていれば負ける可能性もありますが、かなりの確率で負ける試合(ついでに勝てる試合も)排除してくれるはずです。
結果的にセンスのない人でも、資産形成の手段として株式投資を活用することが可能になります。ただし、センスは必要ありませんが必要なものもあります。それは忍耐力です。
自分の分析結果を信じて辛抱強く待つ能力。凡人投資家に必要なのはセンスではなく忍耐力なのです。
閑話休題:株式投資向きの人
資産形成の手段として株式投資を行う場合、投資した資金は増えなければなりません。これは絶対条件です。
企業を応援するために株主になるという人もいますが、個人投資家が証券取引所などで株を購入する資金は、別の投資家に支払われるだけで、ほとんどの場合、企業の財務には無関係です。バブル崩壊以降、上場企業の多くは個人株主を増やそうと努力していますが、そこは色々な大人の事情があるのです。
企業といえども本音と建前があります。まさか、株価下落で株の持ち合いが難しくなったので、個人の株主を増やしたいと思っているなどとは口が裂けても言えません。投資家には、情報を鵜呑みにしない疑い深い人が向いています。
また、株式投資に夢を求めてもいけません。もとい、夢を見るのは自由なのですが、投資判断に夢を持ち込んではいけません。株式投資をするのならハードディスクのパーテーション設定もできない人が「この会社は第二のマイクロソフトになる」などと簡単に予想するのは避けるべきです。
企業の将来像を予測するのはきわめて困難で、現経営者にだってほとんど不可能です。その業界や技術などに関してズブの素人にそんな予想ができるはずがありません。
※パーテーション設定とは1台のハードディスクを区分けして利用するための設定です。もちろん株式投資とは無関係です。
ただし、株式投資は債券投資や商品投資(貴金属や原油、ゴムなどへの投資)などとは本質的に異なる点があります。それは投資対象が「人の努力」そのものであることです。1kgの金は10年後も1kgの金ですが、企業という人の集合体は、よりよい商品の開発やサービスの提供を目指して向上していくところに価値があるのです。
株式投資の本来の姿は、人間が持っている向上心に対する投資だと思います。一生株主でいたい企業に投資するのが理想ですが、現実の株式市場は人間の欲望も同胞しています。分かりやすく言えば美味しそうに見える毒饅頭と本当の饅頭が一緒の皿に盛られているのが株式市場の実態です。
1kgの金は10年後も1kgの金ですが、10年後の毒饅頭はゴミ箱行きになっている可能性大ですから、個別株投資をするなら臆病なくらいがちょうどいいのです。