投資スタイルには様々なものがある
世の中には様々な投資のスタイルというものがあります。どのようなスタイルであっても結果的に投資成績が優れているのであれば、それは良い投資スタイルだと思います。
投資のスタイルを確立することは、言い方を変えれば自分なりの投資ルールを作ることと同じで、非常に重要な作業です。
ただし、投資スタイルは色々な考え方に基づいて出来上がっていますから、異質なものを組み合わせて自分のスタイルを確立しようとすると、少し困ったことになってしまうのです。
たとえば、同じ陸上競技でも短距離と長距離では使う筋肉も違いますし、訓練方法も異なります。短距離選手が長距離選手の訓練を行う場合、役に立つものもあれば、そうでないもの、また、弊害のあるものもあるでしょう。
投資のスタイルについても同じことがいえます。プロの投資家などから何かを学ぼうとするときに、その人がどのようなスタイルで投資を行っているのかを知らずに、その人の言うことを鵜呑みにするのは、ある意味では危険な行為なのです。
そこで、この章では基本的な株式投資のスタイルや考え方について簡単に解説をしておきたいと思います。
分散投資
分散投資の考え方は「将来の予想などできない」ことが前提となっています。神様でもない限り将来のことなど分からないのだから、様々な商品に分散して投資し、収益のブレ幅を抑えようというのが分散投資の主張です。
投資理論的には、分散対象は逆の値動きをするものを組み合わせる必要があります。同じような値動きをするもの、たとえば日本のマンション業者の株を2銘柄持っていても、これは本来の意味での分散投資とはいいません。
ところが、逆の値動きをするものを組み合わせることによって、次のような効果が生ずるのです。
【図2-1:分散投資の効果】
ここに●と■という2つの投資対象があるとします。●は年1%のリターンを期待できますが、予想は3.5%のブレ幅があります。このブレのことをリスクといいますが、ここでいうリスクは危険を意味するものではありません。
仮に予想が上にぶれれば儲けは4.5%になるからです。逆に下にぶれれば2.5%の損になります。■は期待リターン5%でリスクは10%ですから、うまくいけば年15%の儲けも期待できるわけです。
さて、この●と■を半々ずつ組み合わせるとどうなるでしょうか。期待リターンはちょうど半分の3%になります。つまり★の位置です。しかし、リスクであるブレ幅は▲の位置である3%になります。従って、分散すれば悪くてもチャラ、うまくいけば6%のリターンが期待できるのです。不思議ですね。マジックみたいです。
では、具体的な数字で検証してみましょう。投資金額を100万円とすると、まず期待どおりの結果になった場合は次のようになります。
投資金額 | 投資結果 | |
● | 50万円 | 50万円×101%=505,000円 |
■ | 50万円 | 50万円×105%=525,000円 |
合計 | 1,030,000円 |
儲けは3万円ですからリターン3%で予定通りの結果となりました。
次に●の予想が上にぶれた場合です。この場合、■は逆の値動きをしますから予想は下にぶれます。
投資金額 | 投資結果 | |
● | 50万円 | 50万円×104.5%=522,500円 |
■ | 50万円 | 50万円×95%=475,000円 |
合計 | 997,500円 |
若干、元本割れを起こしていますが、おおむねチャラといっていい結果です。
最後にこれとは逆に予想がぶれたらどうなるかを見てみます。
投資金額 | 投資結果 | |
● | 50万円 | 50万円×97.5%=487,500円 |
■ | 50万円 | 50万円×115%=575,000円 |
合計 | 1,062,500円 |
リターンは6.25%と良好な結果となっています。ほぼ前述の説明の通りです。
本来の分散投資とはこのように値動きの逆になるものを組み合わせることで、ある程度のリターンを確保しながらリスクをさげるところにあります。従って、単に複数銘柄に投資する場合は、分散投資という表現を使わず複数銘柄投資ということにします。
さて、以上を踏まえて分散投資の特徴を整理すると、分散投資には次のような特徴があることが分かります。
- リスクを下げる効果があり大負けしにくくなる。
- ただし、大儲けもまず期待できない。10年で投資金額2倍なら大成功
- 値動きが逆になる投資対象をどのように選択するかが難点
- インデックス・ファンドの組み合わせ程度なら基本的には投資対象の分析に時間がかからないが、投資家自信にも何が原因で値動きしているのか分からない。その結果、長年投資しても投資経験は養われにくい。
- でも、自分で効果的な分散をしようと考えるとある程度の資金が必要で、分析も大変になる。
- 下手な投資信託を組み合わせると、コスト(信託報酬)が割高となり、ますます期待リターンが下がる。
という感じでしょうか。高いリターンを望まない面倒な人にはピッタリな投資法です。このように書くとほめ殺しと思われるかもしれませんが、多くの専門家が推奨するように優れた投資法の1つであることは間違いありません。
世の中の多くの人たちは投資のために生きているわけではないので、運用はしたいと思うが、具体的に何をすべきか分からなくなったら、分散投資も選択肢の1つと考えてください。