テクニカルとファンダメンタル

テクニカルとは過去の市場動向(株価、出来高、値動きなど)から将来の株価や相場の動向を予測するテクニカル分析に基づく投資手法で、主にチャートなどを使用して分析を行います。従って、あまり長期の投資には向きませんから短期投資派の投資手法ともいえます。

一方、ファンダメンタルは経済や企業の諸条件(景気動向、為替レート、原油価格、売上高や利益率等の財務指標など)を分析することにより、将来の企業価値を予測する投資手法です。通常は短期投資派以外の人が採用することが多い方法といえます。

もっとも、私はファンダメンタルといっても、さらに2つに分けることができると考えています。

1つは企業の資産価値から考えて株価が安い銘柄を見つけて、その水準が妥当な株価に近づくところに収益源を求める方法です。バリュー株投資とも呼ばれています。

そして、もう1つは長期的な成長力に着目して、その成長に応じて株価が上昇するところに収益源を求める方法です。こちらはグロース株投資と呼ばれます。

両者はともにファンダメンタル投資に分類されますが、別の投資手法と考えた方がいいでしょう。実は前述のウォーレン・バフェットは後者の手法に傑出した人物で、その考え方に触れるとバフェットが名投資家であると同時に類い希なる経営分析の才能(経営の才能とは別です)を持っていたことが窺えます。

ちなみに、バフェットの師匠でもあるベンジャミン・グレアムという人物はバリュー株投資を半世紀以上も前に確立した人です。

ドルコスト平均法

これまでに紹介した投資法とは趣が異なりますが、この手法もよく耳にする方法の1つです。この方法は短期の株価動向を予測することができないという前提のもと、同じ銘柄を定期的(例:1ヵ月ごと)に一定の金額(例:2万円)で購入すれば、必然的に安い株価のときに多くの株を買うことができる(平均購入単価を下げられる)というもので、簡単にいえば購入時期の分散になります。私も日本株の インデックス・ファンド で実験的に行っています。

ただ、この方法は既に多くの方に指摘されているように、万能の方法でも、儲かるための方法でもありません。また、ドルコスト平均法で億万長者になったという話も聞いたことがありません。

では、この方法がこれほど普及している理由は何かというと、タイミングを考えなくてもいいことです。
つまり、ある銘柄が割安だと判断して、仮にその予測が正しかったとしても、その時点の株価が最安値かどうかその時には分かりません。

最安値のタイミングを計っている間に株価が急騰してしまうかもしれません。逆に買った後にも株価は下がり続けるかもしれません。そこでドルコスト平均法を使えば、とりあえず投資をスタートできますよというところでしょう。気休めといえばその通りですが、心理的側面では理解できます。

私が提唱する投資スタイルとは

基本スタンスはバリュー株投資と呼ばれる方法です。つまり割安株投資法なのですが、割安の基準を会社の資産価値(財産的価値)にはしていません。その理由は会社の資産価値を把握できないからです。

たとえば、会社が資産として現金を100億円だけ持っていて、借金は20億円であれば会社の資産価値は80億円と判断できます。

しかし、現実の会社は様々な資産を所有していますし、その資産に10億円の金額が付いていても、その資産の価値は10億でない場合がほとんどなのです。これでは決算書などの公表資料からバリュー株を見つけることはできません。

そこで割安の基準を会社の収益(利益)としています。その意味ではグロース株投資の手法を採用しているわけです。しかし、一般的なグロース株投資では、長期的に成長を継続する企業を対象とするため、現時点の収益から判断すると決して割安ではない株も投資対象としています。

これが非常に危険なのです。高成長企業に投資するのは良しとしても、割高株は予測が外れた場合のダメージが大きいので、ビジネスモデルの分析に優れている人以外にはおすすめできません。
また、私の投資法では、割安の基準を1年以内の収益として判定しています。経験上、部外者である個人投資家が分析できる収益力など1年以内が限界と割り切ったのです。

では、投資期間は1年以内かというと必ずしもそうではありません。収益予想は間違っていなくても、株価が上がらない(=割安のまま)ということが起こるからです。その場合は、再度1年後の収益を予測し、割安であればホールド、そうでなければ売却します。これを繰り返しますから投資期間は終わってみなければ分かりません。

投資対象は極端な集中投資を避けます。理由は1年以内とはいえ将来の予測に賭けるわけですから、想定外の事態が発生したり、予測が間違った場合のことを考慮した結果です。保有銘柄は1つでもかまいませんが、投資資金を全額1銘柄に投入するのは避けた方が無難です。

これが私でお伝えする基本の投資スタイルです。重要なのは1年以内とはいえ、いかにして将来の収益を予想するかにあります。才能のない人に将来の予想などできるのか疑問に思う人もいるかもしれませんので、野球にたとえて説明します。※野球にたとえることが多いですが私は野球経験ゼロです。

たとえば、ペナント・レースが始まる前にどのチームが優勝するかを予測するのがグロース株投資。それなりに予測は立てられるでしょうが、当たるかどうかは神のみぞ知るというところでしょう。

一方、現在バッターボックスにいる打者がヒットを打つかどうかを予測するのが短期投資。しかも、打者は打率5割のバッターとなれば、こちらの予測も結構難しいと思います。

では、今日の試合の勝敗予想はどうでしょうか。これも試合が始まる前はそう簡単ではないと思います。しかし、6回の裏が終了して得点は6対ゼロ。勝っているチームのピッチャーの調子も良さそうな場合はどうでしょうか。試合開始の時点よりも明らかに予想しやすい条件が揃っています。

このように予想しやすい条件が揃って、かつ、株価が割安である銘柄を発掘して投資するのです。これが割安株投資法の投資スタイルです。これでも勝てないようなら、ある意味それも1つの才能です。自慢してください。

割安株投資法 第3章:割安株その1 へ続く